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ジャンルとは?
撮影所システム下におけるジャンル映画、すなわち古典的ハリウッド映画にその対象が偏りがちであったジャンル映画研究において、現代ハリウッド映画と従来のジャンル映画理論との時間的、理論的距離を埋めることを目的とした修復作業が近年盛んに行われているが、編者であるスティーヴ・ニールも例に漏れず本書Genre and Contemporary Hollywoodをその流れの中に位置づけている。ニール自身も2000年にGenre and Hollywoodを上梓しているが、本書はリック・アルトマンのFilm/Genre など近年のジャンル研究における理論実践を受けた形でのケース・スタディを中心とした実証的研究論集という趣が強い。本書を考察する前に、ジャンルの定義について触れておく必要があるだろう。ジャンル映画とはまず「スタジオ・システム下で製作配給公開されたフィルムのこと」(1)である。またアルトマンの定義(2)を待つまでもなく、ジャンルはそうした複数の映画群を束ねる条件なるものを提示することはあっても、それが本質的な定義を持つことは決してない。したがってジャンルとは流動的かつ抽象的な概念でもある。ジャンルは形式と内容によってのみその絶対的な定義が下されることはない。ジャンルは製作、配給、興行、批評といった限定的な空間でのみ発生、流通するのではなく観客による受容と認識、さらにはその時代の社会状況を含めた広範囲におよぶ相互関係の中から複合的に形成されるものである。それゆえジャンルは今も昔もハリウッドの映画製作の中心的役割を担うと同時に、常に変容する可能性に満ち溢れていると言えるだろう。以上のようにジャンルが定義されるとき、撮影所システム崩壊以降のハリウッド映画を考察していく上においてもジャンルは重要な参照枠であることが理解できる。そこにはジャンルを古典的ハリウッド映画にのみ適用可能とする論拠はどこにもないし、映画史の暴力的な断絶を回避する手助けとしても有効である。現代におけるハリウッド映画を映画史という俎上に載せる上で、本質的に(定義が)存在しないからといってその存在を軽視することはできまい。ジャンルとの対話なくしては現代のハリウッド映画について語ることは到底不可能であるだろうし、それを怠る者は「映画の死」への安易な絶望と古典的ハリウッド映画への感傷旅行に就くか、現代におけるハリウッド映画を、突如出現したグローバリゼーション下における特異な現象として片付けることしかできないだろう。さまざまな空間における対話によってジャンルは時代時代によってその形を変容させ、また新たなジャンルも生み出すことで脈々と生き続けているのである。
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